トム・クランシーの遺作「米露開戦」に違和感あり

「巨匠の遺作」ということで、「米露開戦」1~4巻を読みましたが、結論は、やはりトム・クランシーは死んだ、ということですな。いや、これ書いてから死んだのかもしれないけど、今までの作品とはちょっと違う。

トム・クランシーの紡ぎ出す世界、その世界を支える価値観に全面的に賛成するわけでは無い。しかし、とにかくストーリーが力強く、テクノスリラーと呼ばれるとおり最新の軍事技術の描写すぐれ、面白かった。本作では、その面白さの重要な部分であるストーリーの力強さが消え、どうも細かくなりすぎていると思う。いや、水準以上の面白さはあるんですがね。

内容

(「BOOK」データベースより)

第1巻 ロシア政府はシロヴィキといわれる治安・国防機関の出身者に牛耳られていた。彼らは、特権により私腹を肥やし、メディアを操り、体制批判者の暗殺さえ厭わない。ヴォローディン大統領がその筆頭で、彼はかつてのソ連のような、大ロシア帝国を築こうとしていた。その突破口として目をつけたのが、ウクライナだった―
第2巻 30年前―。ジャック・ライアン・シニアは32歳のCIA分析官。彼は米英の情報機関の連絡係としてロンドンに出向、ソ連情勢を精査していた。その折スイスの銀行でKGBの金庫番と思われる人物が何者かに射殺された―。そして現在、ジャック・ジュニアもロンドンのリサーチ会社で同じくロシアの不正な資金の流れを追う。だが、30年前の父の行動が、今のジュニアを窮地に…。
第3巻 ロシアのヴォローディン大統領は、ウクライナへの侵攻を成功させた直後、今度はウクライナ領土を通過するすべての天然ガス・パイプラインを一方的に閉鎖する。これでロシアから西欧へのガス供給は75%減に。30年前―。ジャック・シニアはスイスで射殺されたKGBの金庫番を捜査するため現場へと飛ぶが、同僚工作員がバスに轢かれたとの知らせが入る。これは単なる事故死なのか。
第4巻 ロンドンのリサーチ会社でロシアの不正な資金を追っていたジャック・ジュニアは、ある手がかりを求めてスコットランドに住む富豪に会いに行く。その富豪からジュニアは、当時何者かがKGBマネーを盗み、それをスイスの秘密口座に隠したことを知る。その莫大な預金に思いがけない人物が関与していた。そして30年前、父も同じ金の流れを追っていたが…

「BOOK」データベースが引いてみましたが、軍事衝突の細かい描写や兵器解説は、トム・クランシーらしいリズムにあふれている。しかし、30年前と現在のカットバックになるあたりから、もっさりとした雰囲気になる。話が小さくなる感じ。一気呵成のクランシー節じゃなくなるんですよ。老眼の当方としては、30年前の部分の文字が小さいのもマイナスポイント。

戦闘シーンも、CIAの拠点を守るあたりは迫力はある。まさにハラハラドキドキ。このあたりは堪能した。しかし、肝心の米露の戦いが、局地的で限定的。米露の戦いというよりは、「天頂」というコードネームの暗殺者の正体探しが本作のメイン。看板に偽りありとは言わないが、大げさですよ。

ジャックライアンは死なず?

クランシーが死んでも、共著者であるマーク・グリーニーがジャックライアンシリーズを引継ぐらしいが、果たしてどのようなものになるのか。翻訳が出れば、多分買って読むだろうが、期待と不安が4分6分というところか。

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