ジェフリー・アーチャー/クリフトン年代記第1部「時のみぞ知る」あらすじ

ジェフリー・アーチャーの大作クリフトン年代記を楽しく読むためのあらすじです。

第1部 「時のみぞ知る」

○メイジー・クリフトン 1919年 上巻P.11~
そもそも、物語の因縁は、主人公ハリー・クリフトンの母メイジーが、夫アーサー・クリフトンと結婚する前に別の男と情を交わしたことにあった。

○ハリー・クリフトン 1920年-1933年 上巻P.17~
ハリーの物語は1920年代、イギリスの港町ブリストルを舞台に始まる。ハリーは、ウェイトレスとして働く母と共に祖父母、造船所で働くスタン伯父と暮らし、父は第一次世界大戦で戦死したと教えられていた。下層階級の貧しい家に育ったハリーは、サッカー選手か世界を旅する船乗りを夢見る少年。勉強嫌いで、伯父が働く港に入り浸っていた。その港の端に見捨てられた鉄道客車に住むオールド・ジャック・ターと、人生の師とも言うべき本当の友人として出会う。
ハリーは、稀なる美声という意外な才能に恵まれ、ミス・マンディの聖歌隊に入る。聖歌隊員として必要な読み書きは、担任のホールコムから学び、学期が終わった休暇中はオールド・ジャックの教えを受けた。
聡明なハリーは、聖歌隊奨学金を得て、上流階級の子弟が入る進学校セント・ビーズへと進む。寄宿学校であるセント・ビーズでは、労働者階級であるがゆえに戸惑うことも多かったが、優等生のディーキンズ、バリントン海運の御曹司ジャイルズ・バリントンという親友を得る。
富裕層の子弟たち、とりわけ監督生のフィッシャーから目の敵にされ、一度は夜中に寮を抜け出すが、オールド・ジャックに諭され朝に戻った。ジャイルズの誕生日にディーキンズと共にバリントン家に招かれた際に、ヒューゴ・バリントンに質問され、ジャイルズより誕生日が前だと知られる。また、このときジャイルズの妹エマを知る。ジャイルズの万引きがハリーの仕業と疑われ窮地に陥るが、難を逃れた。
休暇中の新聞配達で得た賃金で、ホテルのウェイトレスの責任者となった母に時計を贈ることができた。のちにペアウォッチをオールド・ジャックがハリーに贈る。
声変わりしてソプラノを失ったハリーは、聖歌隊奨学生ではなく、一般公募奨学生を目指してブリストル・グラマー・スクールを受験することになった。その結果は・・・

○メイジー・クリフトン 1920年-1936年 上巻P.163~
アーサー・クリフトンと結婚したメイジーは、8カ月後に男の子を出産し、ハロルドと名づける。結婚前にヒューゴー・バリントンと情を交わしたが、アーサーの息子で無いと思わせるところは無かった。
ある金曜日、アーサーが戻らず、スタンが5ポンド札の束を持って帰ってきた。スタンは翌日、住居侵入罪で逮捕され、金の出所はバリントンだと主張するも認められず有罪となる。
働き手を失い、仕事を得る必要があったメイジーは、職を探し、バリントン海運の清掃員に申し込んだが、素っ気なく断られる。ようやく、ミス・マンディのつてでミス・ティリーの軽食堂のウエイトレスの職を得ることができた。
ハリーが初等学校の校長から鞭打たれる理由を知るため学校を訪れた際、ハリーの担任ホールコムから、ハリーは聡明な子であり、可能性を持つことを告げられ、以降メイジーは、ハリーの可能性を伸ばすよう行動するようになる。
デートしたエディ・アトキンズから酒場のウエイトレスの監督者として、ロイヤルホテルの総支配人であるミスター・フランプトンからホテルのティールームの責任者としてそれぞれリクルートされ、オールド・ジャックのアドバイスもあり、ロイヤルホテルに転職する。ロイヤルホテルのティールームの改善に努め、テールームは客で溢れるようになる。
ブリストル・グラマー・スクールにハリーは合格したが、奨学生にはなれなかった。そのためメイジーはハリーの学費を負担できる仕事が必要になった。そこに、ミス・ティリーから彼女の店を売りたいという申し出があった。ねんごろになっていたアイルランド人の金融関係者パトリック・ケイシーの助言の元に銀行から借り受けを行い、店を手にした。事件はありつつも店は次第に繁盛していったが、放火による火事で焼けてしまう。メイジーはまたロイヤルホテルに戻り、職にありつくが、ハリーの学費を賄うには足りなかった。メイジーはオールド・ジャックと作戦を練り、ヒューゴー・バリントンと対決し、ヒューゴーの息子であるとしてハリーの学費の面倒を見るように求めるが撃退される。危うくハリーを退学させなければならないところだったが、店の保険金が降りることになった。

○ヒューゴー・バリントン 1921年-1936年 上巻P.279~
契約期限の迫った船の建造を急ぐため、ヒューゴーは作業中に船内に閉じ込められたアーサー・クリフトンを見殺しにし、スタン(スタンレー)・タンコックに口止め料を支払った。しかし、その金は盗まれたと警察に届出る。タンコックが逮捕されて刑務所に入ったら、アーサー・クリフトンに関して誰も彼の話に本気で耳を貸す者がいなくなることを狙ってのことだった。
ヒューゴーは色盲で、ジャイルズも色盲だったが、ハリーも色盲であることを知る。危機感を抱いたヒューゴは、元警官デレク・ミッチェルを密偵として使い、メイジーの行動を報告させることにする。
ジャイルズの誕生日に、ハリーの誕生日の方が先だとヒューゴーは知る。このことは、ハリー・クリフトンがバリントン家の財産を相続する可能性があるということだった。
ミッチェルの報告から、メイジーの店の放火と保険金が下りる見込みだと知る。しかし、その保険金はヒューゴーが肩代わりしていた債務の支払に消えるものであった。ヒューゴーは、ロイヤルホテルに赴き、メイジーが客と寝ていると支配人に告げ、解雇を約束させる。

○オールド・ジャック・ター 1925年-1936年 下巻P.9~
オールド・ジャックことジャック・タラント大尉は、南アフリカで11人を殺し、部隊を救った。その中にはジャイルズの祖父ウォルター・バリントンもいた。この殺人のショックで、神経衰弱となったタラントは、軍を離れ、名を変えブリストルに向かった。そこでウォルター・バリントンと出会い、住居と港の夜警の仕事を得た。オールド・ジャックはハリーの父親アーサー・クリフトンがいなくなった事件の一部始終を見ていた。
オールド・ジャックは、ハリーのために様々な手助けを行った。担任のホールコムと協働してミス・マンディの聖歌隊へと導いた。そしてハリーの美しい歌声を聞き、セント・ビーズへの道を開くためフロビッシャーと連絡を取った。ハリーが新聞配達で得た賃金で、時計を母に贈るとき、密かに援助してやった。
メイジーの店が放火され、降りた保険金も債務でほとんど消え、さらにロイヤルホテルの職を失った時に、メイジーから相談を受ける。ハリーの父親がヒューゴかもしれないとメイジーから告白を受けながら、策を練り、ヒューゴーとアーサーの死の真相の調書と引換に300ポンドの学資金を得る取引をするが、ヒューゴーの密偵ミッチェルに調書を奪われる。
父の葬儀に出席した際、父からの手紙を渡される。ジャックの才能を生かすのが神が求める道であるとさとすその手紙を読むことで、オールド・ジャックは自らを閉じ込めていた牢獄から解き放たれた。

○ジャイルズ・バリントン 1936年-1938年 下巻P.91~
ジャイルズは、わざとイートン校を不合格になり、ブリストル・グラマー・スクールに行くことになった。
最終学年前の休暇で、ローマでハリーと会うために、ジャイルズは妹のエマと共に赴く。しかし落ち合ったヴィラ・ボルゲーゼでツアーガイドに恋をし、彼女とのデートの間、妹のエマの面倒をハリーに見てもらう。
1937年のブリストル・グラマー・スクールの演劇祭で「ロミオとジュリエット」をハリーとエマは演ずる。二人は恋に落ちていた。
観劇の際に途中退場したヒューゴーの態度に怒った妻のエリザベスとエマは、家を出てしまい、ジャイルズとハリーはエリザベスとエマの居場所を知っていそうなオールド・ジャックに会うためにロンドンに向かう。エリザベスの父ハーヴェイ卿のスコットランドの別荘と当たりをつけスコットランドへ。ミッチェルの尾行を振り切って、別荘でエリザベス、エマと再会する。ハリーとエマが愛し合っていることは誰の目にもあきらかで、このことに反対しているのはヒューゴーだけだった。
マナー・ハウスに戻った家族にヒューゴーは謝罪するが、ハリーに対する態度の理由については、その父アーサーの死の責任を感じているからとだけ言う。
ハリーたちはブリストル・グラマー・スクールを卒業した。ディーキンズは、オックスフォードの最優秀奨学生となり、ハリーも給費生として迎えられた。ハリーが母に報告しようとロイヤルホテルに行くと、母はそこで働いておらず、エディ・アトキンズのナイトクラブで勤めていることがわかる。

○エマ・バリントン 1932年-1939年 下巻P.181~
エマは、ジャイルズの誕生日のお茶会のときからずっとハリーを意識していた。しかし、ハリーに取ってはローマでの出会いが最初のようだった。そのローマでエマとハリーは初めてデートし、それから頻繁に会うようになった。学校が始まって頻繁に会えなくなったので、ハリーはグラマースクールの演劇祭にエマの学校を参加できるようにし、二人はロミオとジュリエットで恋人同士の役を得た。初日の幕が上がるころにはそれはもう演技ではなかった。
ハリーのオックスフォード合否を知るために落ち合うと、ハリーはショックを受けた様子で、母が売春婦だったとエマに告げ、それがヒューゴーから避けられる理由だというが、エマはヒューゴーから聞いた、ハリーの父アーサーの死とヒューゴーの関係を話す。
ジャイルズもオックスフォードに合格し、三人の親友のオックスフォード生活が始まった。
エマもオックスフォードに入るべく、懸命に勉強する。ハリーの1年目の終わりにオックスフォードの舞踏会に招待されたエマは、その夜ハリーと結ばれ、ハリーはエマにプロポーズする。エマはジャイルズの十二歳の誕生パーティにマナー・ハウスにハリーが来た日から決めていたと承諾する。
結婚式の日、エマにオックスフォード合格の通知が届く。そして、結婚式のさなか、ジャック・タラントが異議を申し立て、両家の親族が集まった中、ハリーとエマの父親が共にヒューゴー・バリントンである可能性を指摘する。ハリーが色盲であることも、バリントン家の血筋である可能性を疑わせた。式場を出たエマは、生まれてくる子に父親は誰かと訊かれた何と答えることになるか心配するのであった。

○ハリー・クリフトン 1939年-1940年 下巻P.235~
結婚式は中止になり、ジャイルズと共に学寮に戻ったハリーは、ジャイルズの異母兄であり一族の財産の相続者である可能性を知る。
多くの人々の運命を変えることになった結婚式の中止だった。エマはハリーの元を去ったが永遠の愛を誓い、異議を申し立てたオールド・ジャックは、ブリストルの港の客車でビクトリア十字勲章をつけて死んでいた。
ハリーは、ウォルター・バリントンからオールド・ジャックと一緒に従軍していたこと、オールド・ジャックが命を救った24人の中に、ウォルターの他にフロビッシャー、ホールコムの父、ディーキンズがいたことを知る。
ハリーは、ウォルターの協力を得て、本格的な軍艦に乗る前の訓練のため、見習い航海士として老朽貨物船「デヴォニアン」に乗り込む。ハリーは順調に船の仕事をおぼえていった。しかし、その間に英独が戦争に突入し、デヴォニアンはUボートの魚雷攻撃を受け、ハリーは機関室の救難活動中に閉じ込められてしまう。
ハリーは生き残り、アメリカ船「カンザス・スター」に救助された。共に救助された三等航海士のトム・ブラッドショーが死んだとき、とっさの決断で彼になりすまし、死んだ彼がハリー・クリフトンとすることにする。このことで多くの問題が片付くと思ったからだ。母には密かに真相を手紙にした。
ニューヨークに着いて、カンザス・スターから下船したハリーは移民局に出頭したハリーは直ちに逮捕された。トム・ブラッドショーには第一級殺人罪の容疑がかかっていたのだ。

時のみぞ知る〈上〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫)51pqXg2AzTL._SX356_BO1,204,203,200_

時のみぞ知る〈下〉―クリフトン年代記〈第1部〉 (新潮文庫)51wgumz60rL._SX349_BO1,204,203,200_

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