ジェフリー・アーチャー/クリフトン年代記第6部「機は熟せり」あらすじ

ジェフリー・アーチャーの大作クリフトン年代記を楽しく読むためのあらすじです。

第6部 「機は熟せり」
○プロローグ 上巻P.11~
エマ対レディ・ヴァージニアの裁判で膠着した陪審は、フィッシャー少佐からエマの弁護人トレルフォード宛に書いた手紙公開を求める。トレルフォードが上着のポケットに手を入れたが、手紙はもはやそこには無かった。

○ハリーとエマ・クリントン 1970年-1971年 上巻P.16~
トレルフォードが法廷に持って行った手紙のコピーを、ヴァージニアが手に入れたことに疑いは無かった。その手紙を法廷に提出すればエマが勝てるだろうが、エマはジャイルズの政治生命が失われることを恐れ公開を良しとしない。
しかし、何者かがメディアに手紙の内容をリークし、エマは裁判に勝利する。手紙の内容は、ヴァージニアのバリントン海運打倒の企みを明らかにするとともに、ジャイルズが彼の子を妊娠したカリンを助けようとしていないと非難するものだった。
裁判後のバリントン海運重役会で、エマを会長の座から引きずり下ろそうとしていたヴァージニアに連なる三人の重役は辞職を余儀なくされる。しかし、彼らは新会社「メラートラベル」を作りバリントン海運に敵対する構えだ。さらに、スローンを重役会に送り込む。
ハリーは、ハロルドの後を継いだ息子のアーロン・ギンズバーグとババコフの「アンクル・ジョー」出版の契約を紆余ありながらも結ぶ。宣伝のため出演したテレビでその卓越した記憶力を披露し、一躍有名人になり、「アンクル・ジョー」はノンフィクションの、ハリーの最新刊はフィクションのベストセラーリストのトップになる。

○ジャイルズ・バリントン 1971年 上巻P.107~
ジャイルズは、カリンの父ジョン・ペンジェリーと会い、その言葉からカリンとは相思相愛の仲と確信する。
アレックス・フィッシャー死去に伴う補欠選挙では、ジャイルズに代わって立候補した若きボブ・フィールディングが補欠選挙を勝った。
ジャイルズは、東ベルリンで行われる国際会議に赴き、西ドイツの外相ワルター・シェールのお膳立てによる替え玉作戦で辛くもカリン・ペンジェリーを英国に連れ出す。しかし、彼女は潜入スパイだった。
ジャイルズは貴族院に議席を得るが、それはカレンの喜びでもあった。

○レディー・ヴァージニア・フェンフィック 1971年 上巻P.175~
ヴァージニアは、その豪奢な生活を維持できない経済状況に陥りつつあった。銀行から小切手の換金を拒否され、父からも贅沢を止めろと釘を刺された。窮したヴァージニアは、恋人がいるアメリカの富豪サイラス・T・グラント三世に近づき、恋人のための婚約指輪を買うのを手伝う。その後同衾したように見せかけ、指輪を換金し、銀行に借り越し分支払う。サイラスはアメリカに逃げ帰った。

○セバスティアン・クリフトン 1971年 上巻P.229~
セバスティアンは伯父のジャイルズ・バリントンとクリケットの試合を見に行く。そこでインド人のプリヤ・グーマンと出会い一目ぼれする。デートの後、紅い薔薇を贈り続け、彼女の心を得て首尾良く結ばれる。しかし、ヒンドゥー教徒の彼女の結婚は親が決めるものであり、彼女は親の決めた結婚のためインドに連れ戻され連絡も取れなくなる。セバスティアンはインドに飛び、思い出の紅い薔薇を使って彼女と連絡を取り、監禁状態の彼女を救い出しイギリスに飛ぼうとする。しかし、飛行機に乗り込む寸前、プリヤの護衛にセバスティアンは撃たれ、彼女は命を奪われる。
ハリー・クリフトンは、内閣官房長官のサー・アランと会見し、以前に記憶して持ち帰ったロシアのスパイの名前から、ジョン・ペンジェリーとカレン・ペンジェリー、実はカリン・ブラントがスパイであることを確認する。
邪な三人組ことデズモンド・メラー、エイドリアン・スローン、ジム・ノウルズは週に一度会合を持っていた。彼らはバリントン海運の重役会への参画、ソール・コーフマン亡き後のコーフマン銀行とファージング銀行の合併を阻止しようとするようだ。

○レディー・ヴァージニア・フェンフィック 1972年 上巻P.317~
ヴァージニアは豪奢な生活を再開し、またも手許不如意になり始める。彼女は執事のモートンの子をサイラス・T・グラント三世と自分の間の子と偽って養育費を騙し取ろうと考える。彼女はサイラスの結婚式が行われるバトン・ルージュに赴く。弁護士のバック・トレンドと謀って、結婚式に侵入し、サイラスに妊婦姿を見せつける。ロンドンに戻ってはデズモンド・メラーと協力により妊娠を装い、彼女の厳格な父伯爵もこれを信じた。サイラスの弁護士とトレンドにより和解案が成立し、後はどう子どもを産んだと見せかけるだけだった。ヴァージニアは早産を装ってサイラス側の医師の立会を逃れ、実はモートンの子フレディの誕生により示談金と養育費・教育費をせしめる。

○メイジー・クリフトン 1972年 上巻P.365~
ハリーの母、メイジーが世を去った。ハリーはその葬儀の頌徳の言葉で、その瞠目すべき人生について語るが、途中で言葉が続かなくなる。ハリー、エマ、セバスティアンはメイジーが残した手紙により、新たな目標を与えられる。

○エマ・クリフトン 1972年-1975年 上巻P.383~
エマは王立ブリストル病院の理事に就任する。マーガレット・サッチャーと面会し、彼女の政治活動への協力を求められる。副理事に上ったエマは、サッチャーを鼓舞し、保守党党首選に立候補させ、サッチャー保守党党首となる。エマは、バリントン海運会長、プリストル病院副理事長、保守協会の支部長の役割を果たすことになったが、今又、病院理事長から辞任の連絡があった。
カリン・ペンジェリーことカリン・ブラントは、スパイとして潜入しているにも関わらず、ジャイルズを愛するようになったことを悩んでいた。MI6のサー・ジョン・レニーは、シンシア・フォーブス-ワトソン男爵夫人を使って彼女をイギリス側に寝返らせる。男爵夫人がカリンのイギリス側の管理官となる。カリンは、ジャイルズと結婚の許しを東ドイツ側管理官のペンジェリーから得る。

○セバスティアン・クリフトン 1975年 下巻P.43~
セバスティアンは、ウルフ博士からサマンサの夫が1年前になくなったことを知る。その直後コーフマン銀行とファージング銀行合併の調印が行われる。しかし、重役が刑務所の世話になったことがあればイングランド銀行の商人は得られない。ハキム・ビシャラは、ナイジェリア訪問の帰りの飛行機で身に覚えの無いドラッグを手荷物に仕込まれ、税関で逮捕される。エイドリアン・スローンの差し金で、これにより、合併を白紙に戻し、白馬の騎士としてファージング銀行会長の座を得るつもりだ。
セバスティアンは、娘ジェシカの卒業展示会で、彼女の絵を買うためアメリカに飛ぶ。そこでジェシカと再会し、彼女のお膳立てでサマンサと再会するはずだったが、ハキム・ビシャラの逮捕のため急ぎロンドンに戻らなければならなかった。
ハキム、セバスティアン、ロス・ブキャナン、アーノルド・ハードキャッスルのチームが元警部のバリー・ハモンドを探偵に雇い事件の真相究明に当たる。ファージング銀行の株価は、ハキムの親友ジミー・ゴールドスミスが買い支えにより安定し、さらにジャイルズがファージング銀行の重役に就任してくれた。彼らは重役会でエイドリアン・スローンと厳しく対立する。ハキムが有罪になったら、スローンが会長になり、セバスティアン達は辞任を余儀なくされるだろう。
サイラス・T・グラント三世と結婚したエリー・メイは、サイラスがヴァージニアに高額の金を払ったことを聞き、真実の解明に乗り出す。

○ハキム・ビシャラ 1975年 下巻P.111~
ハキムの裁判が行われる。検察側のジョージ・カーマン弁護士とハキム側のギルバート・グレイ弁護士の戦いは、月曜日に行われる最終弁論を残して検察側が有利かと思われた。しかし、最終弁論の直前に、客室乗務員がハキムのバックにヘロインを忍び込ませたことが明らかにされ、ハキムは無罪となる。
ハキムはファージング銀行会長の座に戻り、会長を代行していたロス・ブキャナンは引退する。

○ジャイルズ・バリントン 1976年-1977年 下巻P.181~
バッキンガム号爆破未遂事件の際、事件の秘匿に協力してくれたルイジアナ州議会議員のヘイドン・ランキンが、今は州知事となっていた。彼は、その支持者であるサイラス・T・グラント三世とレディー・ヴァージニア・フェンフィックに関する件で、ジャイルズに面談を要請してきた。
ヴァージニアは、偽装出産への協力の見返りに叙爵を求めるデズモンド・メラーからを騙し、叙爵活動のためと称して金を毟り取る。
探偵バリー・ハモンドは、首都警察の元同僚であるメイ・リンを使って、メラーとエイドリアン・スローンの通話を録音する。その会話の中でスローン達は、ハキム・ビシャラのインサイダー取引をでっち上げようとしていた。ハキムはこの録音でスローン達を告発しようとするが、秘密裏になされた違法な録音だとしてアーノルド・ハードキャッスルに止められる。
モーリス・スワンの切望した劇場が、サマンサ・サリヴァン劇場として開場の日を迎えた。セバスティアンはそこでサマンサにプロポーズし、受け入れられる。彼らはローマで結婚式を挙げる。
スローンの差し金でファージング銀行のスタッフが、ハキムをイングランド銀行に訴える。審理される倫理委員会の席に、ジェシカのアイディアでスミソニアン研究所からダニエル・ホロウィッツを招聘する。音響学教授の彼により、インサイダー取引の証拠テープが切り貼りしたもので、ハキムは無実であると証明される。
スローンは、スコットランドヤードの薬物対策課に呼び出される。ハキムの麻薬持ち込みを偽装した容疑で追及され、窮した彼は・・・
カリンは、ペンジェリーから工作活動を要請される。裏切った工作員のあぶり出しとハロルド・ウィルソンに関する風説の流布だ。これをフォーブス-ワトソン男爵夫人に伝え、二重スパイと疑われないように動くよう指示される。しかし、彼女の正体は、ほどなく偶然に露見する。
ジャイルズと会ったランキンは、サイラスの妻、エリー・メイがピンカートン社の探偵を雇い、ヴァージニアがサイラスの子を産んだのは信じがたいとする報告を得たことを伝え、情報提供を求める。
サイラスとエリー・メイは、ヴァージニアに対する支払を停止した。彼らは、フレデリックの本当の親であるモートン夫妻を雇ったのだった。

○ハリーとエマ・クリフトン 1978年 下巻P.293~
アナトリー・ババコフがノーベル文学賞を受賞した。ババコフ釈放運動は盛り上がりを見せ、ついにロシア側指導者も授賞式に合わせた釈放に同意する。ハリーとエマはスウェーデン国王の賓客として授賞式に招待され、スウェーデンの空港でババコフを迎える。しかし、ババコフは心臓発作で死去していた。ハリーは、急遽ババコフの代理で「ペンは剣より強し」で結ぶ感動的な受賞スピーチを行う。
ハリー、エマ、ババコフの妻イェレーナは、特別に発給されたビザでババコフの葬儀に参列するが、イェレーナはババコフの眠るロシアで過ごすことを選択する。
エイドリアン・スローンが不利な証言をしたことで、デズモンド・メラーは、有罪となり収監された。彼と面会したヴァージニアは、報酬に釣られてスローンへの復讐に協力する。メラーの指示に従い、彼の金庫の中の品をソーホーで交換し、金庫の暗証番号をスローンに教えた。スローンは、金庫から出した金を使い、偽札容疑で逮捕されるが、メラーが常習容疑を被せようとしていたため罠だとわかり釈放される。メラーはセバスティアンと面会の約束を取り付ける。
サイラスからの送金が止まったヴァージニアは、またも手許不如意となっていた。ヴァージニアの父の遺言書が開封され、彼女が期待していたウィスキー蒸留所の権利は、ヴァージニアの子とされているフレデリックに譲られ、経営責任は長兄に委ねられた。
ハリーの父アーサー失踪に関わる「メイプル・リーフ」号が解体の時を迎えた。エマは解体時にアーサーの遺体を捜索する手はずを整える。
カリンのイギリス側管理者のフォーブス-ワトソン男爵夫人が天寿を全うした。カリンはペンジェリーにと面会するが、カリンの正体はばれていた。銃声が谺し、カリンの身体が崩れ落ちた。

機は熟せり(上): クリフトン年代記 第6部 (新潮文庫)

機は熟せり(下): クリフトン年代記 第6部 (新潮文庫)

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