本当は年末年始に読むはずだった上下巻、ようやくこの祝日で読みました。「極大射程」に始まるスワガー・サーガに属する本作は、70年前に起こった狙撃事件と現在とが交錯する物語。
最初は、70年前の事件を掘り返すばかりでボブ・リー・スワガー(主人公のスナイパーね)も年を取った(御年68歳!)アクションからは引退かと思ったが、そこはそれ。ちゃんと話は現在進行形の事件と交錯して魔の手がせまるわけですよ。アクションありです。まだボブはスナイパー=戦う男だった。
70年前の事件というのが、ナチス親衛隊の大物をソビエトの美人スナイパーがナチス占領下のウクライナに潜入して狙撃するというものなのだが、この美人スナイパーが魅力的。そもそも感銘を受けるレベルの美人という感じに描かれていますからね。その名も白い魔女。頭も良くてクール。若干ニヒリズムなところも良いです。
あまし筋とは関係しなさそうな、フォン・ドゥレールという落下傘降下分隊長がオフビートな感じで、またいいんだよな。ソビエトの侵攻を防ぐために橋を爆破する活躍は、ドキドキ読んだが、その後も登場して、これがどう絡むかとおもっていたら・・・
これ以上はネタバレになるので、書けませんが、最後は大団円という感じでカタルシスがある良いお話でした。
ただ、小説的には、御都合主義的だなあなところがかなり見られる。そんなに簡単に銃が手に入るの、しかも万全な状態で、とか。
前作「第三の銃弾」がケネディ暗殺ネタとボブの物語を交錯させた大傑作だったのに比べるとさすがに一枚落ちると見たね。しかしそこらのアクション小説より楽しませてくれるのは、もうボブ・リー・スワガーそのものが魅力的なんだろうな。いや、個人的には、フォン・ドゥレールが良かった。